すい臓がんの手術
手術は、最も高い治療効果が期待できますが、体への負担が大きく、合併症の危険も伴います。したがって、できるだけ手術の経験豊富な(手術件数の多い)病院で受けることが大変重要です。そうした病院が通院できる範囲にない場合は、自宅近くの病院や診療所から手術を行う病院を紹介してもらいましょう。その後の通院は近くの医療機関に戻っても、医療機関同士で検査データや治療方針などが共有されますので、安心して治療を受けることができます。
手術を受けることができる(手術適応)患者さん
すい臓の周りの動脈や離れた位置にあるリンパ節、ほかの臓器ヘの転移やお腹の中にがんが広がっていない(腹膜播種がない)ということに加え、手術に耐えられる体力があることも適応条件になります。
3つの手術法
がんのある場所によって決まります。
膵頭十二指腸切除術
がんが十二指腸近くの膵頭部にある場合は、膵頭部とその周りにあるリンパ節、十二指腸、胆のう、胆管を切除します。また、がんが発生した場所や広がり方によっては胃の一部も切除することがあります。この手術は、小腸(空腸)と残った胆管、すい臓、胃をつなぎ、食べ物と膵液・胆汁の通り道の再建を同時に行います。
(ピンク色の部分が切除される部位です)
膵体尾部切除術
がんが膵体部、膵尾部にある場合は、膵頭部を残し、膵体部、膵尾部とその周囲のリンパ節、膵尾部の近くにある脾臓も切除します。がんの大きさや場所により、膵尾部とその周りのリンパ節のみの切除となる場合があります。
がんが周りの臓器や主要な血管に広がっていない場合は、開腹手術ではなく、腹部に数か所の小さな穴を開け、そこから専用の小型カメラと手術器具を入れて手術を行う「腹腔鏡手術」も選択肢になる場合があります。
(ピンク色の部分が切除される部位です)
膵全摘術
がんがすい臓全体に広がっているときには、全摘術になります。切除範囲は、すい臓全部と十二指腸、胆管、胆のうです。切除後は、小腸と残った胆管、胃をつなぎ、食べ物と胆汁の通り道を確保します。
(ピンク色の部分が切除される部位です)
その他手術について知っておきたいこと
門脈合併切除について
門脈とは、すい臓の裏にある小腸からの血液を肝臓に送る太い血管です。すい臓に接しているため、ここにがんが広がりやすく、その場合には切除となります。そのうえで血管をつなぎ直すのが、門脈合併切除です。
手術時に起こる可能性がある主な合併症
下記の2つの合併症はどちらも腹痛や発熱などの症状があり、感染、腹膜炎、出血が起こることがあります。こうしたことが起きた際も適切な対応が可能な、手術件数の多い経験豊富な病院を選ぶことが大切になってきます。
- 膵液瘻/膵液漏 縫い合わせた箇所から膵液がお腹の中に漏れる
- 胆汁瘻/胆汁漏 縫い合わせた箇所から胆汁が漏れる
術後の対策
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膵酵素補充
手術ですい臓を切除すると、すい臓から分泌される消化酵素が減ってしまい消化がしにくくなります。消化を助け、栄養状況を改善するために、パンクレリパーゼなどの消化酵素補充薬を服用します。
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糖尿病対策
手術後は、すい臓からのインスリンの分泌が少なくなるため、定期的なインスリン注射が必要になる場合があります。